2025年9月15日に東京・国立競技場で行われた世界陸上競技選手権大会(東京2025)の男子3000m障害決勝で、日本代表の三浦龍司選手(SUBARU、23歳)が8分35秒90で8位入賞を果たしました。
これは同種目で日本人初の2大会連続入賞(前回2023年ブダペスト大会6位に続く)という快挙ですが、レース終盤の最終障害(ハードルと水濠の直後)で、銅メダルを獲得したケニア代表のエドマンド・セレム選手(17歳)と接触が発生し、三浦選手がバランスを崩して失速したシーンが物議を醸しています。
セレム(ケニア)は明らかに、自身の左手を外側に返して、三浦選手の手を掴んでいます。
前後のフォームから見ても、この時の手の動きが故意であることは明らかなのでは。#男子3000m障害#三浦龍司 pic.twitter.com/NaCkwErzNA— 世陸応援📣 (@FCnvIyD96R33447) September 15, 2025
本記事では三浦龍司選手とセレム選手の接触について、詳細をまとめていきます。
三浦龍司とセレム選手の接触について
- レース展開: レースは超スローペースで進み、最終1周(ラスト400m)で一気に加速。三浦選手は地元の大歓声に押され、3位争いに浮上しました。最終障害でセレム選手が外側から並びかけたタイミングで、両者がほぼ同時に踏み切り、着地後に肩や腕が接触。セレム選手の左手が三浦選手の右手にかかり、後ろから押されたような形で三浦選手のバランスが崩れ、再加速が遅れました。
- 映像からの分析: スローモーション映像では、セレム選手が三浦選手の肩を押し、着地後に腕を引っ張るような動作に見えるため、「故意の妨害」との指摘がSNSなどで広がっています。一方、セレム選手本人は「着地後にぶつからないよう外に避けようとしたが、腕が接触しただけ。意図的ではない」と説明し、レース後には三浦選手と互いに祝福し合ったと語っています。三浦選手自身も「この競技の難しさであり、面白さ。運はつきもの」と言い訳せず、接触をレースのアクシデントとして受け止めています。
- 関連する類似事例: 同大会の男子1500m準決勝では、米国のコール・ホッカー選手が接触で失格(DQ)になったケースがあり、一貫性のなさを指摘する声もあります。大迫傑氏(元マラソン選手)はXで「大いに言っちゃって(抗議して)いい」と競技者目線で私見を述べ、接触のラフさを問題視しています。
セレム(ケニア)はなぜ反則で失格ではない?
陸上競技のルール(World Athletics規則)では、3000m障害は「障害物競走」として、接触自体は混戦状態で避けられない場合が多く、接触自体が必ずしも反則ではありません。
ただし、以下の場合は失格となります。
・故意の妨害: 相手を押す、引っ張る、肘打ちなどの明確な悪意ある行為。
・危険行為: 相手の進路を意図的に塞ぐ、または安全を脅かす接触。
単なる「偶発的な接触」はペナルティなしで、審判団がビデオレビューで判断します。この種目は「格闘技に近い接触が起きやすい」とされ、過去のオリンピックや世界選手権でも類似のアクシデントが失格に至らないケースが多数あります。
今回の判断
公式リザルト(日本陸上競技連盟・World Athletics発表)では、セレム選手にDQは適用されず、銅メダル(8分34秒56)が確定。三浦選手の8位も変更なし。
審判団は接触を「偶発的」と認定した模様で、日本側からの正式抗議も確認されていません。セレム選手は17歳の若手で、ケニアの伝統的な障害走スタイル(積極的なポジション取り)が影響した可能性がありますが、明確な証拠(故意の証明)が不足したため、失格には至りませんでした。
セレム選手の説明
一夜明け、国立競技場そばのメダルプラザで行われた表彰式に参加したセレム選手が、接触について言及しました。
レースを振り返ったセレム選手は「周りに囲まれていたけど、かなり良いパフォーマンスができたと思う。そこから抜け出すのが少し難しくて苦戦したけど、最後にスペースができたからね。今こそ動く時だ、と思ったよ」と最終盤を回顧。
その上で、最終障害で接触した場面については「ジャンプした時に、ミウラが目の前にいたんだ。だから、ぶつからないように避けようと思った」と説明。
「(着地した後で)少し外に動こうとしたけど、彼も同じ考えだった」といい、ここで腕の接触が発生したそうです。